健康意識の高まりとともに、多くの人が気にするようになった血糖値。この記事では、血糖値とはどんなものか、血糖値をコントロールする上で大切なことは何かについてご紹介します。
■ 血糖値とは?
血糖値とは、血液中に含まれるブドウ糖(グルコース)の濃度のこと。食べ物や飲み物から摂取した糖質は最終的にブドウ糖に分解され、小腸から吸収されて血液中に流れるようになります。
血糖値が高い状態が続くことを高血糖と呼びます。特定健診(特定健康診査)*1では、空腹時血糖ないし随時血糖100mg/dl以上またはHbA1c(ヘモグロビンA1c)*2 5.6%以上(NGSP値)を特定保健指導の基準値(保健指導判定値)としています。一方、メタボリックシンドロームの診断基準では空腹時血糖110mg/dl以上を高血糖としています。
高血糖になると血液の粘度が高くなり、ドロドロ、ネバネバな状態になり、血流が悪くなって血管に血液が詰まりやすくなり、また、血管を内側から傷つけてしまいます。
*1:特定健康診査(特定健診)・特定保健指導は、40歳~74歳の被用者保険(健康保険組合や全国健康保険協会など)や国民健康保険の加入者を対象として実施されている、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)に着目した健診および保健指導です。
*2 :ヘモグロビンは赤血球内のタンパク質の一種で、全身の細胞に酸素を送る働きをしています。血液中のブドウ糖がヘモグロビンにくっ付くと糖化ヘモグロビンになります。HbA1cは糖化ヘモグロビンがどのくらいの割合で存在しているかをパーセント(%)で表したもので、過去1~2ヶ月前の血糖値を反映します)。
■ブドウ糖とは?
グルコース(ブドウ糖)とは、炭水化物を構成する基本単位である「単糖」のこと。全身の筋肉や脂肪組織の細胞に取り込まれてエネルギー源として利用される、人体に必須の栄養素です。なお、骨格筋や脂肪組織がグルコース(ブドウ糖)を取り込むにはインスリンが必要になります。
続いて、血糖値を正常に保つ上でカギとなる成分についてご紹介します。その成分とは、「インスリン」と「グルカゴン」という2種類のホルモンです。
■インスリンとは?
インスリンは、すい臓のランゲルハンス島という組織の「ベータ細胞」で作られるホルモンで、体細胞がグルコースをエネルギー源として取り込む場合や余ったグルコースを貯蔵する際に必要です。グルコースを細胞内に取り込むため、「細胞のドアを開ける鍵」とも呼ばれています。インスリンは、食後、血糖値が上がると分泌され、空腹時には分泌が減ります。
なお、空腹時でもインスリンの分泌はすべて止まるわけではなく、常に少量が分泌されています(基礎分泌)。これは、血糖値を上昇させるグルカゴンが働き過ぎて高血糖にならないようにするためです。
血糖値をコントロールする上で、インスリンとグルカゴンのバランスを調整する力が重要になります。
■グルカゴンとは?
グルカゴンは、すい臓のランゲルハンス島という組織の「アルファ細胞」で作られるホルモン。空腹状態になると分泌され、肝臓で蓄えられていたグリコーゲンを分解し、ブドウ糖を新しく生成(糖新生)して、血糖値を上昇させます。ここで作られたグブドウ糖は空腹時、就寝時、運動時などに使われます。血糖値の上昇を抑えるためにインスリンが分泌されると、グルカゴンの分泌は抑制されます。
■インスリンとグルカゴンの関係
インスリンとグルカゴンの関係をまとめると、以下のとおりです。これら2つのホルモンが体内で調整し合うことで、血糖値が正常になるようバランスが保たれています。
次のページでは、この2つのホルモンがカギとなる「血糖値コントロールのメカニズム」について、より詳しくご紹介します。